週末ファーマーによる自然農の野菜栽培

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自然農の野菜づくり

第1章 生命の営みをつなぐ自然農の要諦(畑の準備をする、野菜を切らさない作付けの工夫 ほか)
第2章 自然農の野菜・つくり方のポイント
第3章 自然農の野菜などの加工・保存の工夫


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 川口由一氏の提唱する"自然農"を理想として、耕起せず、肥料はやらず、雑草は抜かず、害虫をも防除しない(化学農薬も自然農薬も不使用)で、野菜を育てることを目指しています。多種類の豊富な動植物と共存する生物多様性を実現する家庭菜園にするべく、群馬県西部で週末に農作業をしています。ビニールのマルチやトンネルなどの非再生資材は使わず、農業機械も使わずエコロジーです。ただ、地力不足なので、有機質肥料を少し与えることもあります。


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硝酸態窒素と発ガン性について
 硝酸塩は、水、土壌、植物、食品中など、どこにでも存在し、人間の体内でも硝酸塩を作っており、体液中にも存在するありふれた物質であり、人体に危険性のあるものではない。
(※化合物命名法や学術用語集では、「硝酸窒素、亜硝酸窒素」という名称であるが、「硝酸窒素、亜硝酸窒素」という名称も使われている。)

 「FAO/WHO合同食品添加物専門家会合(JECFA)は、硝酸塩の摂取と発がんリスクとの間に関連があるという証拠にはならないという見解を発表した・・・wikipedia 硝酸塩より」
 硝酸塩の危険性については、書籍の「硝酸塩は本当に危険か − 崩れた有害仮説と真実 (自然と科学技術シリーズ)」が、ヒトへの健康問題に付いて詳細に検討されており、非常に役立つ。抜粋すると「乳児メトヘモグロビン血症は、硝酸塩含有量が高いことが原因なのではなく、微生物汚染が原因である。発ガン性のN-ニトロソアミンの生成により、理論として硝酸塩摂取とガンは関係付けられているが、疫学的調査によれば関連性は確認できず、むしろ抗ガン性の可能性を示している。WHO、米国、EUによる飲料水と食品中の硝酸塩の規制法は、科学によって支持されず、再吟味されるべきである」。
 結局のところ、硝酸塩の問題は、硝酸塩のリスクを過大評価し、誤った危険性が世界的規模で広まってしまった例と思われる。

 自然農法の野菜を販売している店や農家の一部で、硝酸態窒素の害を誇張し、不安をあおって、商売に利用している例がある。「○○だそうだ」、「何とかのようだ」などの表現ばかりで根拠を示さず、商品に誘導しようとするのは、悪質商法によくある手口である。
 農林水産省などの機関への硝酸塩の問い合わせも増えているようで、農林水産省のホームページには、野菜中の硝酸塩に関する情報が、一般向けに詳しく記載されているので読んでおくとよい。また、1998年に開催された日本学術会議シンポジウム 土と水と食品の中の硝酸(NO3)をめぐる諸問題 講演資料は、全78ページが公開されていて非常に詳しい。

硝酸塩の体内での代謝
大人の場合には、ヒトが水や食品を介して摂取した硝酸塩は、主に消化管上部から吸収され、血液に移行し、一部が唾液中に分泌され、大部分は腎臓を通じて尿中に排泄されます。健康な大人の場合、空腹時のように胃内pHが1〜2と低い場合は、微生物がほとんど存在せず、微生物による還元が起きないと考えられていますが、食品が胃内にある場合などpHが上昇した場合は、亜硝酸の生成が認められたとの報告があります。唾液中に分泌された硝酸塩の一部(4〜7%との報告あり。)は、口腔内の微生物により、還元されて亜硝酸塩になります。農林水産省 硝酸塩の体内での代謝より引用
 「唾液中に分泌された硝酸塩の一部(4〜7%との報告あり。)は、口腔内の微生物により、還元されて亜硝酸塩になります」とあるが、田中によれば、摂取された硝酸塩の約75%が排泄され、約25%が唾液中へ分泌され、口の中で微生物により分泌された硝酸塩の約20%が亜硝酸塩に還元される。結局、摂取した硝酸塩の約5%が亜硝酸塩になると判明している。また、1976年に行われた日本での調査で、唾液中の亜硝酸塩は平均16.5ppmであり、成人の唾液分泌量を1日1Lとすると、1日では約16.5mgの亜硝酸塩が唾液から胃及び腸へ供給されることになる、という。
(参考)田中幸男,食品中の硝酸レベルと健康問題,1998

硝酸塩の生体内生成
 摂取した硝酸の量と尿中に排泄される硝酸の量は対応せず、また、低硝酸の食事では摂取した量よりも多くの硝酸が排泄されるため、生体内で硝酸が生成されることが分かった(三輪操,亜硝酸塩、硝酸塩、およびN-ニトロソ化合物の生体内合成,1986)

乳児メトヘモグロビン血症(ブルーベビー症候群)

 海外において過去に生後3か月未満の乳児で発生した事例が知られています。これは、3か月未満の乳児は、胃酸の分泌が少なく、胃内のpHが高いため、胃内で硝酸塩から亜硝酸塩が生成され、これが血液中のヘモグロビンと結合して、メトヘモグロビン血症を引き起こすためであると言われています。我が国のように生後5〜6か月から離乳を開始する場合には、胃内で亜硝酸が生ずる可能性は低いため、このような事例が生じるおそれは極めて少ないと考えられています(農林水産省乳児のメトヘモグロビン血症より引用)。
 日本の例では、井戸水が原因の生後21日目の乳児の例が知られている(参考:日本での井戸水が原因の新生児メトヘモグロビン血症事例)。この例の井戸水では、亜硝酸性窒素は検出されず、硝酸性窒素は水道法の基準である10mg/Lを超える36.2mg/Lであった。この乳児は、先天的なメトヘモグロビン還元酵素欠損ではなく、また下痢はしておらず、井戸水は煮沸してもメトヘモグロビンが上昇したことから微生物汚染が原因でもないため、硝酸性窒素が直接の原因となったメトヘモグロビン血症である。しかし、日本で硝酸性窒素が環境基準を超える井戸は、全国に多数あり、井戸の約5%もある。それなのに、メトヘモグロビン血症の報告はこの1例のみのようである。環境基準を超える井戸水を飲用している乳児でも、メトヘモグロビン血症を発症することは極めてまれなのである。
 CornblathとHartmannが1948年に行った実験では、乳児に、硝酸塩濃度を1000mg/Lに高めた水で作った食事(硝酸塩175〜700mg/日)を経口的に投与した結果、メトヘモグロビン濃度は上昇したが最高でも7.5%を超えず、チアノーゼは発現しなかった硝酸塩は本当に危険かp.94より)。※現在では、このような実験は倫理的にできないであろうから、非常に貴重な例である。
 ヨーロッパでは、生後2ヶ月でベビー食品を与えられることが多いが、1993年にEU内でベビー食品2000個以上をチェックした結果、いずれの加盟国においても最高平均濃度は120mg/kgで、1994年アメリカのベビー食品の例では平均硝酸塩濃度は、140〜280mg/kgであった。それにもかかわらず、ベビー食品が原因でブルーベビー症候群となった例は証明されていないようである。
 メトヘモグロビン血症の原因は、硝酸性窒素の濃度や量に関係するというよりも、微生物に汚染された井戸水や冷蔵庫で保存せず微生物が繁殖してしまったベビー食品、腸炎や下痢が原因となって生じることが多いのである。

 環境省 水・大気環境局による地下水質測定結果によれば、概況調査結果(平成20年度)では硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素を調べた全国の3,830本の井戸のうち基準を超過した井戸は167本(4.4%)あった。

 田中ら(1996)によると、日本で報告された乳児の後天性メトヘモグロビン血症は50数例に達するが、そのほとんどは解熱鎮痛剤のフェナセチン、貸しおむつに付着していたニトロベンゾールやアニリンまたは下痢に起因にするものであったという。

硝酸塩と発がん性

ニトロソ化合物
 生体内で、硝酸塩から発ガン物質であるニトロソ化合物の生成の可能性があることから、胃がんと硝酸塩(または亜硝酸塩)の摂取の関係についていろいろな研究がされています。胃がんと硝酸塩の関係については、関係があるとする研究もありますし、関係が認められないとする研究もあります。大部分の研究は結論が出ていませんし、むしろ硝酸塩の摂取量が増えると、胃がんの発生率が低くなるという逆の相関を示す研究結果もあります。(農林水産省、生体内でのニトロソ化合物の生成と胃がんとの関係より引用)
 硝酸塩や亜硝酸塩には発がん性はない。硝酸塩は酸性条件下ですぐに分解して一酸化窒素になり、胃の中で様々な有機化合物と反応してニトロソ化合物が生成される。また、ニトロソ化合物は、硝酸塩の摂取の有無にかかわらず、正常な代謝の結果として体内でも生成されている。しかし、発がん性が疑われるほどの量が生成されるかは、議論が続いているが、動物実験や人間に対する疫学調査では硝酸塩の摂取がガン発生の原因になる証拠はない。多くの研究の結果、1985年にWHO、1990年にEPA、1995年にEU食品科学委員会は、それぞれ、硝酸塩と人間のガンとの間に積極的な関連性はないと言及した(硝酸塩は本当に危険かより)

 野菜や果物を多く摂取することは、発がん性を低下させる、このことは多くの研究で証明されていることである。多くの野菜を摂取すれば、当然、硝酸塩も多く摂取することになる。硝酸塩の危険性は否定され、むしろ有益性があるとする研究も進展している。硝酸塩はS-ニトロソチオールの生成に寄与し、この化合物は血栓生成を防ぐ。つまり、高血圧、脳梗塞、心臓血管病のリスクを下げるという研究もある。また、硝酸塩は発がん性でななくて、抗がん性があるという研究も最近では行われている。


硝酸態窒素 NO3-Nの基準
 硝酸化合物中の窒素のこと。硝酸性窒素ともいう。水道水および公共用水域では、「硝酸性窒素と亜硝酸性窒素の合計量として基準値10mg/L以下と定められており(平成11年追加項目)、「亜硝酸性窒素単独では0.05mg/Lが監視項目」となっている。
 環境基準は、「Waltonら(1951)による硝酸性窒素濃度と乳児におけるメトヘモグロビン血症発生との関連に関する調査結果をもとに、水道水質基準も勘案し、指針値を現行のとおり硝酸性窒素と亜硝酸性窒素の合計で10mgN/lとする(水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準の項目の追加等について(第1次答申)平成11年2月中央環境審議会)。
 「Walton らの調査は、米国内各州の飲料水中の硝酸性窒素濃度と幼児でのメトヘモグロビン血症発生との関連を文献的に調査し、American Journal of Public Health の41 巻(1951)に投稿したものである。幼児に対するメトヘモグロビン血症の防止の観点から、10ppm (10mgN/L, 硝酸塩として50mg/L)を許容濃度としている。(水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準の項目の追加等について(第1次答申)平成11年2月 別添1 検出率が高い7項目に関する毒性評価の詳細)」
 (硝酸塩は本当に危険かp.138)には、Waltonらの初期の調査について、いくつも疑問があげられている。10ppm以下の症例は、扱わなかっただけであり、10ppmという数値には意味はない。腸炎に起因する事例を除いていない。大部分の事例は田舎で発生しておりメトヘモグロビン測定の分析機器を利用できず診断には疑いがある。井戸水の微生物汚染との関連が分からない。

野菜と硝酸塩
 EUでは、硝酸含量の上限値が定められており、夏季の生ホウレンソウ2500mg/新鮮重kg、生レタスも2,500となっている。
 日本では野菜中の硝酸イオン濃度の上限値は定められていない。五訂日本食品標準成分表のデータによれば、野菜125品目のうち半数の62品目が硝酸イオン濃度が1000ppm以上であり、22%の27品目で3000ppmを越えている(参2)
農林水産省 日本の野菜の硝酸塩含有量

ホウレンソウについて,葉色と硝酸イオン濃度との間に一定の関係はみられないが,葉色とアスコルビン酸含量との間に正の相関がみられることから,消費者に葉色の濃いものを選ぶよう推奨している。
目黒孝司ら(1991)夏どりホウレンソウの内部品質指標.土肥誌62

硝酸イオン濃度とホウレンソウの葉色に有意な相関がなかったことから,硝酸イオン濃度が低く,葉色の濃い品種を選定することが可能であることが示唆された。なお、葉色は葉緑素計により測定。
龍 勝利ら(2007)秋播きホウレンソウにおける硝酸イオン濃度の品種間差異、福岡県農業総合試験場研究報告26

 野菜は硝酸イオンの形で窒素を根から吸収する。硝酸イオンはアミノ酸へ変換されるが、余った硝酸イオンは野菜の中に蓄積されることになるので、日中変動や季節変動が大きい。次の2資料でも、かなり差がある。

以下は、市販の国産野菜に含まれている硝酸濃度の実態調査より
キャベツ:679±453ppm(n=189)
ハクサイ:1320±669ppm(n=186)
レタス:1060±480ppm(n=174)
コマツナ:4060±1720ppm(n=197)
ホウレンソウ:3070±1360ppm( n=208)
チンゲンサイ:2750±932ppm( n=20)
ノザワナ:2840±580ppm(n=20)
カブの根:1630±772ppm(n=20)
カブの葉:3540±1700ppm(n=20)
シュンギク:2940±1110ppm(n=20)
タカナ:3680±1220ppm(n=20)
タアサイ:3340±1310ppm(n=20)
(数値は平均値±標準偏差)

以下は、野菜類等の硝酸根,亜硝酸根含有量調査、東京都健康安全研究センター研究年報 第58号 別刷(2007)より
硝酸根含有量調査-東京都健康安全研究センター


●自然農法と硝酸態窒素
 施肥することのない自然農法の野菜では硝酸態窒素は少ない。化学肥料を使った一般栽培や堆肥を使う有機栽培では、硝酸態窒素を減らすための方法として、土壌診断により窒素量を分析してから施肥量を決めるとか、追肥はなるべく早く行うなどがある。
(参考)野菜の硝酸イオン低減化マニュアル:独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 野菜茶業研究所

自然農法での硝酸塩濃度の例
・ホウレンソウでは標準の6分の1
 福島県 やまなみ農場 東北農業研究センター分析(自然農への道 p.71より)

 なお、炭素循環農法(いわゆる肥料は施肥しないが、炭素率の高い有機資材を非常に多量に畑に播く農法)での硝酸・亜硝酸を調べた例が、ブラジル在住の林幸美氏のホームページに記載されている。一般の野菜よりもかなり低い硝酸濃度であるが、サンプル数や標準偏差が記されていないのは残念である。

野菜の葉色
 野菜の葉色は、主に3つの色素、クロロフィル(葉緑素)、アントシアニン(赤、青、紫)、カロテノイド(赤、橙、黄)から成る。多くの高等緑色植物では、クロロフィルa(青緑色)とクロロフィルb(黄緑色)とが、約3対1の割合で含まれる。カロテノイドは、橙色系のカロテン、黄色系のキサントフィルに大別される。赤シソの赤い色は、アントシアニンによるもの。
 なお、硝酸イオンは、無色透明。硝酸カリウム、硝酸ナトリウムは、無色の結晶又は白色の粉末。亜硝酸ナトリウムは、白〜淡黄色の結晶性粉末。
・葉色計≒葉緑素計
 葉緑素(クロロフィル)の分光特性を利用して、葉緑素量を計測する。葉緑素量を知ることで栄養状態を推測するために使われている。作物の窒素含量が多くなると、葉緑素含量も多く(葉の緑色が濃く)なるという原理。葉緑素は、炭素、水素、酸素、窒素、マグネシウムから成る。

アンモニア態窒素 NH4-N、NH3-N
 アンモニア態窒素は、硝化細菌(好気性)によって酸化され、亜硝酸態窒素、さらに硝酸態窒素にまで変化する。
アンモニア態窒素は、土壌粒子に吸着されるため移動しにくい。

不耕起圃場では圃場から溶脱した硝酸態窒素量は、耕起圃場の1/5程度に低く抑えられた(参1)。

参考)
1 中嶋美幸,不耕起栽培における浸透水中硝酸態窒素濃度の実態(2004)
2 野菜茶業研究所,野菜の硝酸イオン低減化マニュアル(2006)

牛の急性硝酸塩中毒

 牛は反芻動物の仲間で胃袋が4つあり、第1胃には微生物が多数生息しており、硝酸塩が含まれる牧草を食べると、微生物によって硝酸塩が亜硝酸イオンへ変化し、さらにアンモニアに分解される。これらの反応はゆっくりと起こるため、通常は中毒にはならないが、高濃度の硝酸塩を含むと、胃から多量の亜硝酸イオンが吸収されて血液に入り、メトヘモグロビン血症となり、症状がひどい場合は酸素不足となり窒息死する。胃を4つ持つ反すう動物、家畜では牛の他に、ヤギ、羊では硝酸塩による中毒を起こしやすい。
 なお、ヒトの場合は、胃の中のpHが低いため、微生物がほとんど存在せず、微生物による還元は少ない。

参考)
牛の硝酸塩中毒 動物衛生研究所
2012.10.08 Monday | その他 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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