週末ファーマーによる自然農の野菜栽培

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自然農の野菜づくり

第1章 生命の営みをつなぐ自然農の要諦(畑の準備をする、野菜を切らさない作付けの工夫 ほか)
第2章 自然農の野菜・つくり方のポイント
第3章 自然農の野菜などの加工・保存の工夫


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 川口由一氏の提唱する"自然農"を理想として、耕起せず、肥料はやらず、雑草は抜かず、害虫をも防除しない(化学農薬も自然農薬も不使用)で、野菜を育てることを目指しています。多種類の豊富な動植物と共存する生物多様性を実現する家庭菜園にするべく、群馬県西部で週末に農作業をしています。ビニールのマルチやトンネルなどの非再生資材は使わず、農業機械も使わずエコロジーです。ただ、地力不足なので、有機質肥料を少し与えることもあります。


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ナチュラル・ハーモニー 河名秀郎氏の著書について
 河名秀郎氏の著書である「自然の野菜は腐らない」と「ほんとの野菜は緑が薄い」には、いくつか問題があると考えるので指摘する。

 著者の河名秀郎氏は、自然食品の販売店やレストランを運営する株式会社ナチュラル・ハーモニーの創業者。自然農法成田生産組合で1年間の農業研修ののち、1984年、26歳の時に自然栽培野菜の移動販売を開始した。自然栽培野菜・玄米の専門宅配「ハーモニック・トラスト」など業容を拡大している。

河名秀郎氏と宗教

 世界救世教の自然農法や薬害思想、特徴的な用語の使用などの関連性、また、「ナチュラルハーモニー 宗教」や「河名秀郎 宗教」というキーワードでGoogleで検索すると、本記事が1位に表示されるためかアクセスが多い。そこで、河名秀郎氏の著書を読むための参考になると考えるので、宗教との関係について調べてみる。

排毒と薬害思想
 河名氏の著書、ほんとの野菜は緑が薄いp.172-175より抜粋すると、「体の中に溜まった毒は、汗や排泄物、女性なら生理で排出され、最大の排出は病気と思う」、「ナチュラルハーモニーの社員も僕も風邪をひいてもクスリで熱を下げることはしません。クスリを飲まないどころか、社員が風邪をひくと「それはよかった!」と喜びます。風邪は体内に溜まった老廃物や毒素を体外に出そうとしている、体からのサイン」、「(著者の)二人の子供、高校生と中学生は生まれてから一度もクスリを飲んだことも塗ったこともなく、学校の予防接種も受けていません」とのことであるが、世界救世教にも排毒思想や薬害思想がある。
 「病気とは排毒作用:そもそも、病気を最も判りやすくいえば病気とは体内にある不純物、すなわち有毒物を種々の形によって排泄さるるその過程をいうのである、従ってこの世の中に病気ほど結構なものはないので、もし人間から病気をなくすとすれば、人間は健康を保ち得ず、到底長命などは覚束ない虚弱者となるのである、これが千古不滅の真理であって、これを基本として成った医学こそ真の医学である、ゆえに、もしこの真理に外れたいかなる医術といえども、それは真の医術とはいえない疑似医術であるから、到底病気は治し得ないのである。(岡田茂吉氏、救世 57号より)」
(参考)宗教を信じて、アトピー性皮膚炎の治療をせずに子供を死なせた例
 宗教法人「新健康協会総本部」の職員、高月秀雄、邦子夫妻は、2009年10月、長男がアトピー性皮膚炎にかかっているのに、病院で治療を受けさせず、教義に従い「手かざし」という浄霊行為で、病気を治そうとし、自宅に寝かせたまま敗血症で死亡させた。(新健康協会は、世界救世教系の宗教団体で、自然農法を実践している)。夫は「信仰を重んじて病院へ行かなかった。子供を見殺しにしてしまった」、妻は「人間本来の自然治癒力で良くなると信じていた。後悔している」と供述したという。詳細は、日刊カルト新聞

・野菜の腐敗実験
 世界救世教系の自然農法では、野菜の保存実験(腐敗実験)は、少なくとも40年以上前から行われていた。世界救世教いづのめ教団系の自然農法国際研究開発センターで行った保存実験でも、一般慣行農法と一般有機農法は腐敗するが、自然農法栽培では発酵したり枯れたりした。宗教法人救世神教では、自然農法の作物が持つ抗酸化作用として紹介している。

・ネットで検索してみると、神慈秀明会信者の方が運営しているファインラインというホームページによれば「神慈秀明会の自然農法野菜をナチュラル・ハーモニーが後押しして流通させている」そうである。神慈秀明会は、世界救世教の分派教団である。ナチュラル&ハーモニック銀座・店長 中村吉郎氏による「メシヤ様御降臨祭」特集 体験報告というのもあった。メシヤ様は、世界救世教(メシヤ教)の教祖、岡田茂吉氏のことである。

肥料の解釈
 自然栽培では無肥料を強調しており、「どんな農薬も肥料も、有機肥料さえ使わない(自然の野菜〜p.14)」、「畑の作物を収穫するということは、土壌からの栄養分が減るということですから、畑に栄養素を"肥料"という形で人為的に戻してあげなければならない、これが農学の基本的な考え方です。ところが、自然栽培では肥料を全く供給しません(同p.32)」というように書いている。素直に解釈すれば、畑から栄養分が減っても、外部から栄養と成るものを持ち込まないと思うであろう。しかし、著者がいう肥料とは、一般的な解釈とは異なったものであることに注意すべきである。
 著者は別のページで、「自然栽培では枯葉や枯草などの植物を"堆肥"として使うことがあります。"それは肥料じゃないの?"と思われるかもしれませんが、違います。堆肥は"土を固めない・土を温める・土を乾かさない"という目的で使います(同p.90)」と書いており、また、河名氏の著書では、自然農法成田生産組合の例がよくでてくるが、自然農法成田生産組合では「堆肥は自然農法で取れた生産物の残渣のみ(麦わら等)を厳選して使用している」とのことである。このように、植物性堆肥は"肥料"としていないから"無肥料"なのである。
 河名氏は、「私は自然栽培の創始者・岡田茂吉氏の考えに従い、作物は"窒素・リン酸・カリウム"などの物質だけによって育つのではなく、自然界の太陽と水と土のエネルギーが重ね合わさり、それによって育てられていくものだと考えています(自然の野菜〜p.142)」と著者自ら言っているように、「堆肥は"土を固めない・土を温める・土を乾かさない"という目的」を理解するためには、世界救世教の教祖でもある岡田茂吉氏が説いた無肥料栽培についての説明を読むとよいだろう。「自然肥料実施について説明してみると、稲作に対しては稲藁を出来るだけ細かく切り、それをよく土にこね混せるので、これは土を温めるためである。また畑土の方は枯葉や枯草の葉筋が、軟かくなるくらいを限度として腐蝕させ、それを土によく混ぜるのである。この理由は土が固まっていると植物は根伸びの場合、尖根(さきね)がつかえて伸びが悪いから、固まらないようにするのである。それについて、近来よく言われる根に空気を入れるといいとしているが、これは空気が根にいい訳ではない。ただ空気が根元に入るくらいであれば、土が固まっていないからである。これなども農学者の解釈は誤っている。ゆえに、理想からいえば浅根の作物は畑土に、草葉の堆肥を混ぜるだけでいいが深根のものは特に畑土一尺くらい下方に木の葉の堆肥の床を作るといい。これは土が温まるからである。ただしその厚さは、深根といっても色々種類があるから、それに応じた厚さにすればいいのである。世人は堆肥にも肥料分があるように思うが、そんな事はない。堆肥の効果は、土を固めないためと、土を温めるためと、今一つは作物の根際に土乾きがする場合、堆肥を相当敷いておくと、湿り気が保つから乾きを防ぎ得るという、以上三つが堆肥の効果である。(明主様御教え「土の偉力」 昭和26年1月15日発行より)」
 植物質の枯葉などが堆肥の材料であっても、肥料分が全く含まれないことはない。たとえば、銀杏の枯葉で作られたイチョウ堆肥は窒素3.1%、小枝などの伐採くずが材料の緑葉完熟那須野1号では窒素6.4%とのことで肥料と言える濃度の堆肥もある。

河名秀郎氏やナチュラル・ハーモニーに対する批判

 ナチュラル・ハーモニーに対する批判や問題点を指摘したサイトはいくつかある。
硝酸性窒素と野菜の色 〜検証「野菜の裏側」 - 食の安全情報blog
 野菜の色に関する検証、医療についての記述の問題点を指摘し、「不正確な情報を流布しフードファディズムを助長する」という。
進化と自然から学ぶということ - ならなしとり
 「病気にもならず虫にも負けない野菜、腐らない野菜」については、著者の河名氏は植物に関する基礎知識すらないという。
遺伝子組換え作物に対する認識 共通した誤解 - やさしいバイオテクノロジー
 遺伝子組換え作物に対する認識についての誤解を指摘している。
ナチュラル・ハーモニーについての考察 - エムティーファーム やまさんのお庭
 「農作物のリスクについては一定の理解があるようなので、全てが間違っているわけではありません。また、別ページにも書きましたが、自然栽培の食品を否定するものではありません。値段と味を確かめて、嗜好の一つとして選択される分には構わないと思います」とのことである。

野菜の硝酸性窒素

 河名氏は、硝酸性窒素について必要以上に読者を不安にさせていると私は考える。硝酸性窒素が体内で変化して、ごくわずかな量の発ガン物質が発生したとしても、それがガン発生の原因になるとは世界の多くの機関では認めていない。→硝酸塩について
 自然の山菜であっても、ワラビにはプタキロサイドという発ガン物質が含まれている。キャベツにはシニグリンとネオクロロゲン酸、セロリには5-/8-メトキシソラレン、などの発ガン性のある天然物質もある。→参考:味の素KK 食品に含まれる発がん性天然農薬成分
 要は、危険性を冷静に判断することが大事なのだ。多くの野菜を摂取すれば、当然、硝酸塩も多く摂取することになるが、「野菜や果物を多く摂取することは、発がん性を低下させる」このことは既に多くの研究で証明されていることである。硝酸性窒素が含まれるからといって、葉物野菜を食べないのでは、かえって健康を害する。
 河名氏は硝酸性窒素の危険性ばかり強調しているが、自然栽培、無肥料栽培であっても、植物の栄養生理的特性から硝酸性窒素はゼロでないことにも注意したい。

自然の野菜は腐らない

 本書は、化学肥料のみならず有機肥料であっても肥料を使って栽培した野菜は、安全ではなく、それに対して肥料を使わないで栽培した野菜の素晴らしさを述べたものである。肥料を使うと、硝酸性窒素が多くなり、硝酸性窒素は発がん性やブルーベビー症候群となる危険がある物質だと主張している。
 ここでは、いくつかの問題点を指摘する。

 自然栽培の栽培方法については私も賛成する。しかし、著者である河名秀郎氏の主張を述べることは自由であるが、「と言われている」、「可能性がある」など根拠を示さずに読者を不安にさせるような事を書くことは、責任に欠けるのではないかと感じた。
 「奇跡のリンゴ」の著者である有名な木村秋則氏が本書を推薦しているので、関連図書として本書も読まれているようである。また、Amazon.co.jpでの"自然の野菜は腐らない"のカスタマーレビューでは、8件が記載(2010年9月現在)されているが、本書への批判はほとんどなく、評価は高い。しかし、私はいくつかの問題点を指摘するので、「自然の野菜は腐らない」を読む前に、参考にしていただきたいと思う。

【野菜の栄養価】
 「50年前の野菜と比べて栄養価がどんどん下がっており、例えば、ホウレンソウのビタミンC含有量は、日本食品標準成分表によれば50年間で約5分の1に減っている(p.11)」として表に数字を記載して説明し、"この数十年で大きく変化してしまい、もはや本来の「食」の記憶すら失われようとしている"と問題を提起したあとに、"私は本来の野菜に出会いました、自然栽培の野菜でした"、"肥料たっぷりで育てられているからでしょうか?"と化学肥料が原因であるかのように誘導している。しかし、栄養価が低下している原因は別にある
 また、五訂日本食品標準成分表では、ホウレンソウの備考欄に「冬採りは60mg・夏採りは20mg」のように季節によって栄養価が違うことが示してある(参考資料1の五訂版PDF19ページで確認できる)にもかかわらず、河名氏はこれを無視して都合の良い数字を選び、現在の野菜への疑念を増やすために使っているように思える。五訂版が発表された時には、各メディアでも取り上げられており、河名氏は長年流通に携わっているのに栄養価の季節変動を知らないのであろうか。

【野菜の腐敗実験】
 本書の題名「自然の野菜は腐らない」の自然の野菜とは、"自然栽培"の野菜のことである。題名では、「腐らない」と断言しているが、本書を読み進めて半ばを過ぎたところで「常に腐らないというわけではありませんが、腐りにくい傾向があることは確かです(p.102)」、「自然栽培の野菜は腐りにくい傾向がある(p.105)」と書いている。つまり、題名は正しいとは言えないわけで、本書の冒頭で注釈を入れておくか、「自然栽培の野菜は腐りにくい」としなければ、優良誤認にあたるのではないか。
 キュウリ以外の野菜でも手当たり次第実験したとのことであるので、都合の良い実験結果だけを抜き出した可能性もあるから、結果を全て公開すべきであったろう。腐りにくい傾向があったとしても、それがどの程度有意な差であるのか、わずかな差であるのか知りたいものだ。
 キュウリの腐敗実験では自然栽培では形を保っている写真が掲載されて、不快ではない、かすかに甘い匂いがしているとしているが、その後は、どうなったのか書かかれていない。腐らないのであれば、キュウリが醗酵してお酢かお酒になったのであろうか?途中で実験を止めるのではなく、"腐らない"ということを証明するためなのだから、最後まで続けるべきではないのか。
 肥料をやっていない"自然な庭の柿は、お酒に、お酢に変化する"というが、私の近所にも柿の木やあるし、これまで多数の庭の柿を見てきたが、落ちている柿は腐って不快な匂いを発していた。私が中学生の時には、体臭のキツイ男子には"腐った柿の臭い"がするという表現がよく使われていたものだ。落ちている柿は、お酢に変化しているのかもしれないが、普通は"腐っている"という認識だろう。それを醗酵していると表現すれば、そうかもしれないが、私は違和感を感じる。
 腐敗実験で試していただきたいのは、一般的に腐りやすい野菜、たとえばスイカ、トマト、カボチャなどは、自然栽培では腐らないのだろうか。
 腐敗実験を試した例としては、「名も無き空の途中で」というブログを運営されている方は、ハーモニック・トラストの自然栽培野菜や果物で腐敗実験をしたそうで「自然栽培野菜や果物の腐敗実験をやっているけれど、大抵のものは腐らずに枯れていく。もちろんなかには、腐ってしまうものもある」とのことである。
 河名氏の言うような傾向はあるようであるが、"腐りにくい"のであって、"腐らない"と強調しすぎてはいけないし、「人間の腸には、発酵菌も腐敗菌も両方住んでいますが、発酵菌が多いと免疫力が高まって病気に罹りにくくなる一方、腐敗菌が多いと肌のトラブルや肥満、さらには病気を引き起こします。さて、あなたなら、腐りやすい食べ物と腐りにくい食べ物、どちらを腸に入れたいと思いますか(p.106)」とまで書いているのは、理論が飛躍しすぎており、読んだ人を不安に陥れる文章である。机上の実験が、そのまま人体に当てはまるのなら、自然栽培の野菜を食べたら、腸でお酢やお酒に変化していることになる

【ブルーベビー症候群】
 ブルーベビー症候群でこれまでに3千人以上の乳幼児が死亡例が報告されている(p.88)とあるが、メトヘモグロビン血症(ブルーベビー症候群)により3千人以上というのは、過大な推計値ではないのか。1945年に初めて報告されて問題となったが、1940年代〜60年代の古い時代では、腸炎を原因としたメトヘモグロビン血症や微生物により汚染されて亜硝酸塩が生成されたのかが知られておらず、野菜が原因と判断するには不正確である。現在では西欧や米国でメトヘモグロビン血症がほとんど見られなくなったのは、野菜の硝酸塩濃度の規制よりも衛生状態の改善が大きいという(硝酸塩は本当に危険かより)。日本ではこれまで、野菜を原因とした死亡例は報告されておらず、また、日本のように生後5〜6か月から離乳を開始する場合には危険は極めて少ないと考えられている。本書はいたずらに不安をあおるだけで、現状を知らせようとしていないのは倫理的に問題ではないのか。→ブルーベビー症候群について詳細

【硝酸性窒素の規制】
 本書では、「欧米では野菜や水道水の残量硝酸性窒素量を制限しているところが多く、WHOでも基準を設け警戒を呼びかけています。ところが日本はまだまだ遅れており、なんの規制もない状態です(p.88)」とあるが、日本では1978年に水道水質基準に硝酸性窒素・亜硝酸性窒素が加えられている。なお、野菜については日本で基準がないという記述は正しい。欧米で硝酸性窒素の濃度を規制していることは事実であるが、野菜について規制することは、安心にはなるであろうが、科学的に合理的であるかは別問題であり、硝酸塩は本当に危険かによれば、「硝酸塩の規制法は科学によっては支持されない。再吟味されるべきである」とされている。

 「実際、僕が会社で入荷している有機野菜でも、そのなかの四分の一くらいは農薬を使用していますし、果物にいたっては無農薬のものはほぼありません(ほんとの野菜 p.45より)」と書いてあったが、ナチュラル・ハーモニーのホームページのタイトルは、「ナチュラル・ハーモニー 自然栽培野菜と菌匠の発酵食品」になっているように、著者は自然栽培の普及を使命と決めたのではなかったのか。自然栽培以外の農薬を使った有機JAS認証の野菜も扱っているとしたら、著者は何を本当に伝えたいのか私には全く分からない。

 「埼玉県で自然栽培を50年も前から実施しているこの世界の重鎮、須賀和夫さん(p.89)」。人名を間違えている。正しくは、須賀一男さんであり、須賀一男氏のことを題材にした「土にいのちと愛ありて」という本が有名であり、牛が糞をしたところの草を食べないという話もその本に記載されている。須賀氏を取材した記録映画もあるし、有吉佐和子の「複合汚染」にも実名で登場する有名な方である。「自然栽培を50年も前から実施している」とあるが、須賀氏自身は、ずっと自然農法と言っている。

 土の中にある固くて温度の低い層のことを肥毒層と著者らは、言っているが、これは、トラクターなどの機械の重みによって踏み固められた固い土の層のことであり、一般的に耕盤層というもので、よくみられるものである。古くは、馬で耕していた時代にも知られていた。肥毒というなら、成分を分析すればいいのに、固くて温度が低いからといって肥毒と断定するのは強引な論理であろう。

 本書の終わりの方は、アトピー性皮膚炎とか化学物質過敏症などが治ったという体験談が紹介されていて、その後に著者の運営する自然野菜の通信販売店の紹介をしているものだから、これは、なんとか商法に似ているなと感じた。
 たとえ医者が見放したり、ガンの末期だとしても、そのような人がたくさんいれば、その中の何人かは、神様を信じたり、民間療法を試したりして、西洋医学でなくともごくまれに治ることもあるものである。数百人、数万人のなかの運の良い一人か二人が、ある方法で治ったとしても、他の人に効果がなければ、実用上では意味が無い。だから、アトピー性皮膚炎や化学物質過敏症で、試した人が何人いて、そのうち何人に効果があったのか知りたいものである。[2010.2記、2010.11修正]

ほんとの野菜は緑が薄い


ほんとの野菜は緑が薄い

河名 秀郎 著、2010年7月発売

 本の題名となっている「ほんとの野菜は緑が薄い」ということについて、実質1ページしか説明しておらず、題名として適当ではないと感じた。

【ほんとの野菜は緑が薄い】
 "ほんとの野菜"の定義は書いていないが、"無肥料栽培の野菜"のことである。有機栽培を含めた肥料を使った野菜は、硝酸性窒素が「胃がんの発生要因になっている可能性があるというのです」という科学的には証明されていない不確実な理由によって、"ニセモノ"扱いされている。「自然栽培の野菜は緑が薄い」、だから「自然栽培の野菜は硝酸性窒素が少ない」という理屈のようだが、きちんと硝酸性窒素を測定して示してもらいたい。
 "緑が薄い"という説明では、「窒素分が過剰に投入されていない葉もの野菜は、淡い緑色をしています(p.51)」と書いているが、これは誤解を生みやすい表現であろう。同じ種類の野菜を施肥の有無によって比べた場合には、葉色が薄くなる傾向があるということは私も体験している。しかしながら、野菜の色というのは、野菜の種類や品種によって非常に異なり、たとえば、タアサイ、小松菜、ホウレンソウは、肥料を施さなくても濃い緑色だし、ヒユナ(バイアム)は化学肥料を施しても濃いとは言えない緑色だ。本書の表紙は、野菜畑の中で、野菜を持った著者の写真だが、白い花の咲いている野菜(ルッコラと思われる)の葉も、緑が薄くないことは容易に分かる。葉の色が肥料の絶対的な指標にはならないし、不施肥だから全ての葉もの野菜が淡い緑色になるとは限らないことに注意が必要である
 「緑が濃い野菜はからだに良いのか」と問題提起しているが、その理由が「わざわざ肥料を入れて色を濃くしたもの・・・と考えると、僕はそれを選びたくありません。使用するのが化学肥料であれ、有機肥料であれ、肥料を使って本来の姿を変えてしまった野菜は生命力が欠如してしまっていると思うからです」という著者の思想は自由に述べてよいと思うが、「葉もの野菜は若い時期に収穫するため、まだ硝酸性窒素がたくさん残っている」ということについては、同意しかねる。「ほとんどの野菜で生育初期に硝酸塩含量が比較的少なく、生育がさかんになるにつれて増加していき、収穫適期と思われる時期に最高値を示した後は次第に減少していく傾向がみられた(有田ら,葉菜類の硝酸塩含量に関する試験,1983より)」という28種類の葉菜類について生育段階別に硝酸塩含量を測定した調査もある。河名氏は、自身で測定するか調査結果から引用すべきで、正確なことを書くべきであろう。
 なお、ホウレンソウでは葉色と硝酸イオン濃度との間に一定の関係はみられないなどの例(夏どりホウレンソウの内部品質指標)もあるので、「緑の濃い野菜は体に悪い」というような書き方をするのは、正確ではない。
 物事を単純な言葉で表現しようという姿勢だとしても、説明不足、根拠不足であろう。

【硝酸性窒素について】
 前著「自然の野菜は腐らない」に比べると、「硝酸性窒素」についての言及がわずか1ページ弱の文章量になり、ブルーベビー症候群のことは全く触れられていないことに、私は驚いた。あれだけ、不安をあおる書き方だったのに、本書では引用元を「新留勝行著 野菜が壊れる」と示したうえで「胃がんの発生要因になっている可能性があるというのです」と書いており、ある一説を紹介したという感じになっている。「野菜が壊れる」の著者は科学者ではなく、各種の説を引用しながら、単に「硝酸態窒素が発ガン性物質が生成される可能性がある」ことを指摘したものに過ぎない。しかも、「胃がんの発生要因」という文章は、「野菜が壊れる」にはないのである。「発ガン性物質が生成される可能性」が、河名氏の思い込みによって「胃がんの発生の可能性」に変化したと思われる。また、発がん性物質が、ごく微量に生成されたとしても、ガンになるかは別問題であることに注意したい。

 「牛がフンをしたところの草は緑色が濃く、牛がその草を食べない」という現象から、「硝酸性窒素が含まれた牧草が、自分の体によくないものだとわかっていたかのように」ということを導いているが、これは論理が飛躍している。牛が食べないのは、フンが分解されないで土に残っておりアンモニア臭などがあるのかもしれず、牧草が原因とは言い切れない。フンをした場所の草とそうでない草を刈り取ってから、皿に載せて牛の食べ方を比較したほうがいいであろう。牧草が原因だとしても、緑色が濃いという現象の直接的原因は、葉緑素などの色素が多いからであって、牛は色素類の苦味を嫌っているのかもしれない。なお、硝酸性窒素(硝酸イオンは、無色透明。硝酸カリウム、硝酸ナトリウムは、無色の結晶又は白色の粉末)は、緑色ではない。

 私は無肥料栽培を否定するものではないが、その優位性を述べるために、一見、科学的な理屈をくっつけていることに対して、疑問を感じるのである。著者の信じるところを科学の言葉を抜きにして、感性で書いたらよいのにと思う。[2010.11記]

野菜が壊れる


野菜が壊れる

新留勝行 著、2008年11月発売

 本書は河名氏の著書ではないが、「ほんとの野菜は緑が薄い」において硝酸態窒素関連で引用されていた。

 新留氏は、農業機械の会社で技術及び営業企画に携わった後に、「株式会社ジェム」を設立した。会社の事業は「電子発生装置および有機肥料の製造販売」であり、製品には「牛、鶏、豚の飼料や水、畜舎内に電子チャージをする電子チャージシステム」、「汚染された土壌でも回復でき、連作障害もなく、土が酸性化することもなく、収穫量が向上するジェム電子有機肥料」などがある。

 農林水産省のサイトの「消費者の部屋」に記載されていた回答を引用して、農林水産省を批判しているが、著者はニトロソミオグロビンとニトロソアミンを混同しており、全く見当違いの批判であり、知識不足であろう。
農林水産省 消費者の部屋より
Q.ひき肉を入れてピーマンの肉詰めを焼くと肉の色が赤いままだがなぜか。
A.ひき肉に玉ねぎやキャベツなどをまぜ加熱すると、褐色にならず赤い色のままのことがあります。これは、野菜の中にある無機塩が還元され、これが肉のミオグロビンと結合して赤いニトロソアミンができたものと考えられます。(平成16年9月回答)
 現在では、この回答は削除されているが、この回答でのニトロソアミンはニトロソミオグロビンの間違いである。なお、農林水産省のサイトには似たような回答があるので紹介する。なお、この回答は本書の発売前にあったものである。
質問:
 ハンバーグやロールキャベツなどのひき肉と野菜を使った料理で、十分加熱したにもかかわらず、肉の赤みが残ってしまうことがあるのはなぜですか。
回答:
 野菜と生肉の接触する時間が長い料理で、十分加熱しても、肉に赤みが残ることがあります。料理の材料に使った野菜(たまねぎ、キャベツなど)に含まれる硝酸塩が、野菜などに付着していた硝酸還元菌(硝酸を亜硝酸に変える酵素をもつ細菌の総称で、私たちの身近な環境にどこにでも存在している一般的な細菌)の作用などによって、調理中に亜硝酸に変化し、この亜硝酸が肉に含まれる赤色の色素を持つミオグロビンと結合してニトロソミオグロビンが生成されたものと思われます。通常ミオグロビンは、加熱すると褐色に変化しますが、ニトロソミオグロビンは加熱すると安定な薄赤色になります。回答平成19年6月(農林水産省消費者の部屋)より
 新留氏は、このQ&Aに対して、「まるで悪い冗談のようにみえます。ピーマンの肉詰めの肉が赤いのはなぜですか?という消費者の質問に対して、国の役人が、のんきに、淡々と、「それは発がん性物質ができたんですね」と答えているのと同じなのですから。もちろん答えは正確ですが、正確ならよいといういものではないでしょう。国民の健康で幸せな生活を考えるという視点がまったく欠けていると言わざるをえません」とまで書いて批判しているが、新留氏の調査不足が明らかになっただけである。

 本書は、自社製品の宣伝に利用しているだけではなかろうか。[2010.12記]
2010.11.10 Wednesday | その他 | comments(6) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
素晴らしいです!!
そのサイトが宗教に入っているところは, ちょっと勘弁してほしいですね.

旬ですか, 素晴らしいと思います.
単純に栄養価が昔と同じかについては私はわかりませんが, 旬の野菜を食べるようにしたいと思います.

旬の事を考えると, 元気になりますね!0
| ST | 2010/06/22 6:17 AM |
始めまして。

私は本当に化学肥料が”悪”なのか。疑問に思っています。

例えば、永田農法で育てたほとんどの作物も腐ることなく、枯れていきます。(永田農法=化学肥料のみ使用)
そして、ほうれん草等も(サラダ用でなくても)生で食しても美味しく、シュウ酸も非常に少なく育てられます。

要は肥料も使い方次第ではないでしょうか?
| T.Y | 2010/11/03 4:36 PM |
はじめまして。
京都在住のナガオと申します。

私のブログにて、こちらのページを紹介させていただきましたのでご報告いたします。
(不都合ございましたらお知らせください)

いろいろ説はありますが鵜呑みにせず、自分の目で確認したことを信じていきたいなと思いました。


| ナガオ | 2010/12/11 11:12 PM |
ハーモニックトラストの宅配を実際に利用しているものです。

自然栽培の野菜は時間をかけて実直に作られたなと、派手派手しさはないものの清浄な生産者の愛情を感じる野菜でした。実物を手にして思うのは、有機栽培の野菜と比べ細胞が緻密でしっかりしていることでした。

それまで少しでも良いものをと思い有機栽培の野菜の宅配を利用していましたが、同時に持っていた疑問と不満「傷みやすい」理由が自然栽培の野菜と比べることで「水っぽかったから」だということに気付きました。

このサイトで「宗教」との関連を初めて知りちょっとドン引きしてしまいましたが、宅配の入会や利用に関し強制や脅しのようなものは一切なく、お試しから本入会を希望するにあたり確認の電話をいただいた際には、言葉は正確ではないことをお断りしておきますが「無理せず個々の生活に合った形で利用していただきたい」とのことでした。もちろん宗教のお誘いも一切ありません。

自然栽培野菜の科学的な(?)証明については、科学者でない以上、あまり突っ込んで行わないのはある意味あたりまえではないでしょうか。もちろん批判はありですが、興味が湧いた別の方が行ってもいいわけですし。管理者レベルの要求を向けるなら、文部省指定の義務教育用教科書も同様の批判にさらされてしかるべきかと。私が子供のころ「鉄器の使用はヒッタイト人がはじまり」とか「1192年鎌倉幕府成立」とか、「草食動物のウサギに卵を与えて割り出したコレステロールの摂取量」とか、今となっては「なにそれ」的な「科学的」教育がなされていたのを思い起こします。

食べてみて美味しいか美味しくないか、体調に及ぼす影響はどうか、コスト的に対応しうるか、宅配配送に対応しうるか、一消費者としてはこれで十分です。
| 利用者 | 2015/03/09 9:37 AM |
はじめまして。長野県の農政課の方とお話ししましたが、600kgある牛が有機栽培の野菜を食べると死にます。と言っておりました。人間と牛は違いますし、科学的根拠は知りません。知らないのに無責任な発言で申し訳ありません。
| 貴志 | 2016/03/23 4:59 PM |
管理者の承認待ちコメントです。
| - | 2017/03/05 7:38 PM |
 

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