週末ファーマーによる自然農の野菜栽培

最近の記事
このページの記事
記事の分類
本の紹介

自然農の野菜づくり

第1章 生命の営みをつなぐ自然農の要諦(畑の準備をする、野菜を切らさない作付けの工夫 ほか)
第2章 自然農の野菜・つくり方のポイント
第3章 自然農の野菜などの加工・保存の工夫


自然農・栽培の手引き
最近のコメント
リンク
自己紹介
その他
QLOOKアクセス解析
 川口由一氏の提唱する"自然農"を理想として、耕起せず、肥料はやらず、雑草は抜かず、害虫をも防除しない(化学農薬も自然農薬も不使用)で、野菜を育てることを目指しています。多種類の豊富な動植物と共存する生物多様性を実現する家庭菜園にするべく、群馬県西部で週末に農作業をしています。ビニールのマルチやトンネルなどの非再生資材は使わず、農業機械も使わずエコロジーです。ただ、地力不足なので、有機質肥料を少し与えることもあります。


前の記事 : << オオカマキリの飼育と畑での観察
次の記事 : 野菜の栄養価は、昔より低下したのか >>
木村秋則氏の著書「奇跡のリンゴ」、「自然栽培ひとすじに」等を読んで
奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録
石川 拓治 著、2008年

 "自然栽培ひとすじに"では、木村氏の大きな顔写真がなかったように思うが、本書表紙の歯のない口元に思わず目が釘付けになった。この写真の時は、まだ57,8歳だろうに。自然栽培ひとすじにでは、前歯が1本折れた理由が書かれていたけれど、前歯以外も失ってしまうとは。本書を読んだら、なぜ他の歯もないのか分かった(p.146)が、ほんとうに無茶ばかりする人だ。「自分の歯よりもリンゴの葉が大事」と木村さんは言っているが、きっと歯周病だ。私は歯周病の初期で、一生懸命に歯の手入れをしているけれど、放置したら、すぐに悪化する。私にとって歯はすごく大事。でも、木村さんのように興味のあることのみに夢中になれる人だからこそ、偉大なリンゴ栽培を成し遂げられたのだ。
 "自然栽培ひとすじに"は、木村さんの自著であったが、本書はノンフィクションライターの石川氏が冷静な客観的視線と木村さんの視線・言葉をうまく融合して書いている。自著の「自然栽培ひとすじに」では他の人が聞いたら感動的になるような話でもさらっと書いているが、本書ではプロ作家だけあって感動を呼ぶような書き方になっている。"自然栽培ひとすじに"と同じ話でも、本書のほうが格段に詳しく書かれていたり、家族、近隣の農家の人の話など周囲の様子も取材していたりするので、"自然栽培ひとすじに"を読んだ人でも十分に楽しめると思う。2冊読むなら本書のほうを先に読んでおくべきだろう、なぜリンゴが農薬なしでは通常は栽培できないものになったのかその歴史を知っておくと理解が深まるし、木村さんの幼少期から会社員時代のことも分かる。

 自然の複雑な命の絡み合いの重要さに気づかせてくれる。野菜作りは、ともすると野菜と肥料しか見なくなってしまいがちであろうが、虫、微生物、太陽、土、水、自然全体の調和を大切にしなくてはと思う。[2009年11月記]

自然栽培ひとすじに


 「奇跡のリンゴ」とは異なり、本書は木村氏の自著であり、木村氏について想像するイメージも異なるだろう。私は、2006年12月7日にNHKで放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で、木村秋則氏のことを初めて知った。リンゴが何年も収穫できなくて、自殺しようとして山に入り、そこで目にした実をつけた自然のリンゴの木、人が手を加えなくても自然の状態ならいいんだと気づくドラマティックな展開と貧乏に耐えての何年もの無農薬栽培への挑戦に、私も感動して見ていた記憶があった。木村秋則氏が野菜栽培についても書いているというので、本書を読んだ。
 無収穫時代の話は、再度、読んでも感動する。リンゴが収穫できるようになってからも、いろいろと御苦労された様子や支えてくれた人々も大勢いたと知り、ますますいい話だなあと思う。テレビで見た時は、忍耐だけという印象が強かったが、実際は、10回だった農薬散布の回数を、5回、3回、1回と徐々に減らす実験をしたうえでの挑戦だったことや、リンゴ無収穫時代にも米や野菜の無農薬栽培をビンを使って実験を繰り返していたことなど、よく観察・分析されており自信があったたからこそ、無農薬への挑戦ができたのだと思う。木村秋則氏の前歯がない笑顔が印象的だが、自分の歯よりも「リンゴの葉」が大事という、歯のない理由が書かれており、本当に、ご苦労の連続だったようだ。

 野菜栽培でも米栽培と同様に乾土効果が大事で、大きく粗く耕す。乾土効果の目的は、土中に酸素を好気性菌の活動を促すことにある。また、肥料や堆肥を人為的に養分を与えないと虫がほとんどつかないそうだ。肥料や堆肥を使わずに窒素を供給するには、マメ科植物を混作し、マメ科の地上部だけを刈りとって、そのままダイコンを作付すると5年も連作できるという。作物残渣はどうするのか書かれていないが、堆肥は使わないとのことなので、堆肥としては利用していないのであろう。また、稲作の場合には風化が進んでいない黄色いままのワラを鋤き込むと有害なガスが発生するとあるとのことなので、耕起して鋤き込むこともないのだろう。本書で紹介されている自然栽培で野菜を作っている北海道幕別町の折笠農場では、大豆、小豆、トウモロコシ、トマトの全量を自然栽培で育てているそうだ。ネットで調べてみると、折笠農場の主力はジャガイモとタマネギで、低農薬栽培をしている。他にも本書で何軒か紹介されていたので、そのうち他農場についても調べてみよう。

 声をかけるのを止めてしまった隣の畑との境界のリンゴの木、82本だけが、枯れてしまった、声をかけるのを止めたのが原因か偶然か分からないと書いてありました(p.47)が、自然栽培ひとすじに(木村秋則氏著) | ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘によれば、「迷惑をかけないよう隣接した畑に近い自分のリンゴの樹の枝などを切りつめた結果、結局、これらの樹が枯れてしまった」とある。木村 秋則 氏もちょっとドラマティックに書く部分もありそうだなと感じた。

 ワサビの塗布剤「樹木の味方」を木村氏と共同で開発されたサン・アクト株式会社の社長のブログには、本書に書かれていない木村秋則氏を支えた人々のことなど木村氏に関することが多く書かれているので、ぜひ、読んでおくといいと思う。

 2009年のリンゴは、「春の天候不順で良品物少ない」とのことだが、木村秋則氏のブログの8月30日記事では、

「私が、この自然栽培を実践してから、過去の経験において、この冷害の影響を感じたことはありません。10年サイクルで発生する低温障害に対しても、この自然栽培は極めて安定しているように思えます。私のりんごの生育状況は、昨今の日照不足にも関わらず、大きい品種では5cm+くらいに成長しています。」

とあり、さらに7月10日の記事のタイトルが「今年もリンゴたちはすくすくと育っています」とあるので、9月、10月以降に原因があるのではなかろうか?春の天候不順でも夏には例年通りなのだから。木村氏のブログにリンゴを通信販売できなくなったことが書かれていないのも気になる。木村氏の栽培方法は素晴らしいと思っている私を含めた人のためにも。。。[2009年10月記]

自然栽培ひとすじに、木村 秋則、2007
(参考)
自然栽培広場-Nature's-【木村秋則オフィシャルホームページ】
木村 秋則「自然栽培」日記



 木村秋則氏が出演した2009年11月1日に放送されたNHK「課外授業 ようこそ先輩」を見た。高校生たちがリンゴの袋を外す作業を9月上旬にしていたが、どの木にも、たわわにリンゴが実っているではないか!そして、9月下旬、高校生達と収獲していたけれど、かなり実っているように見えた。虫食いのように見える実もあったけれど、高校生達はかぶりついて食べていた。少し小さい感じがしたけれど、例年の大きさを私は知らないからなんとも言えない。「良品」の基準も知らないし。
自然栽培広場-Nature's- を見たら、10月22日付「リンゴ購入のお問い合わせについて」という題で「リンゴの収量が限られているので、既存の客にも満足に行きわたっておらず、新規の客には売れない」との内容のことが書いてあった。今日の放送を見て、さらに人気上昇しそう。

リンゴが教えてくれたこと


リンゴが教えてくれたこと、木村 秋則、2009
1〜3章は、リンゴ栽培が成功するまでの経過であり「自然栽培ひとすじに」と主な内容は同じと思うが、あちこち加筆されて詳しくなっている。4章は、米の自然栽培で、「自然栽培ひとすじに」よりも詳しく書かれている。5章は、自然栽培を広めるために日本各地やケニア、韓国などでの活動。6章は、自然栽培での具体的な技術。
・化学肥料と農薬の使いすぎで砂漠化した農地の再生を、まず落花生、次に麦を植えて成功した例
・与えすぎた堆肥を除くために雑草を生やし、生えた雑草は持ち出して処分し、土が山の土の匂いに近くなるまで田んぼは作らない。
・枯れたものを土の上に載せると虫が来なくなる。植えている野菜の根元に取ったばかりの青草を置くと、2日もすればアブラムシがいっぱいやって来る。青草を取り除き、代わりに枯れ草を置くと虫はいなくなる(p.162)。
・何も施さない畑では、バクテリアの体内窒素の量が、肥料を施した畑のバクテリアの2倍もある。バクテリアの体内窒素があるために、常に必要な時期に窒素が供給されていると推測される。
・農業志望者に、川原の土手のカラスノエンドウの横に大根を播いてみてとアドバイスしたら、1メートル近い大根がとれたそうだ。肥料がなくても肥沃な土と微生物が活性化しているからである(p.167)
・北海道の折笠農場では、ジャガイモを植える前の年に、多種類の雑草の種を播き、雑草を育てた(p.183)。
・畑を自然栽培に転換する場合は、まず、深さ10cmごとに温度を測る。普通の畑では20-30cmのところに温度の低い硬盤層がある。硬盤層を壊すには、根を2メートル近く伸ばす大麦を2,3条播種し豆も1条播く。硬盤層の下には養分がたまっている。
・岩手県遠野市 佐々木正幸氏 リンゴへの醸造酢散布でスピードスプレーヤーを使ったら落葉したので2年目途中から手散布。3年目は3割実ったという。今後、成功するのか気になる。
・リンゴの木の下に大豆を播かなくなったのは、根粒菌がつかなくなったためと「自然栽培ひとすじに」では書かれていたと思ったが、理由はそれだけでなく「青いままでデンプンくさく、食べられないようなリンゴばかりで、大豆をやめたら蜜の入ったおいしいリンゴになった(p.88)」になったという。

「奇跡のリンゴ」が2008年に出版されて一躍有名になった木村氏であるが、その11年も前、まだ経済的にも厳しい頃から、日本の農を変える活動を始めたという。日本経済新聞社の記者に送った長文のFAXで語られている熱い思いは、1995年から少しも変わらずに続いていることに驚いた。[2010.3記]
2010.12.12 Sunday | その他 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
 

この記事のトラックバックURL http://naturefarm.iti5.net/trackback/69
トラックバック